大さん橋からクルーズ客船へ
象の鼻から歩いて横浜港大さん橋国際客船ターミナルにやってきました。
ここは主にクルーズ客船が使用するターミナルで、飛鳥IIやにっぽん丸を始めとする日本の豪華クルーズ客船、そして外国から来たクルーズ客船が発着します。
ここからクルーズ客船に乗るというのは憧れですよね~
…
……実は私、今日ここからクルーズ客船に乗船するんですよ!
といっても乗るのは横浜港(+ちょっとだけ東京湾)を周遊するレストラン船なんですけどね。
その船の名は「ロイヤルウイング」。
ここ大さん橋を起点にベイブリッジをくぐり横浜港をぐるっと廻るコースを1日4回運航しています。
特に夜はみなとみらいの夜景を楽しめることから人気だったこの船。
しかし、残念なことにCOVID-19の影響で力尽き、2023年5月14日の運航をもって営業を休止することとなってしまいました…
再開は模索しているようですが、そのときは新しい船を建造する計画のようで、いずれにせよ現行のロイヤルウイングは運航を終了することになります。
ロイヤルウイングが運航を終了する…それは日本最古の客船が引退することを意味します。
というのもロイヤルウイングは今年で建造から63年を迎える船。現役では一番古い客船なのです。
国鉄急行と張り合った「瀬戸内海の女王」
1960年3月6日。後に「ロイヤルウイング」と呼ばれることになる船は「くれない丸」という名前で阪神~別府航路に就航しました。
↑当時のくれない丸。名前に反して白と緑で塗られていました。
当時は高度経済成長の世の中。阪神~別府航路も需要が拡大していました。
そこでくれない丸は従来の船の3倍となる3000トン級となり、それに加えて速力向上が図られました。
従前は夜行便が中心だった瀬戸内海航路ですが、くれない丸は瀬戸内海の景色を楽しむべく昼行便となり、朝大阪を出発して夜に別府に到着できるダイヤが組まれました。
その所要時間は14時間20分。当時の国鉄急行「高千穂」と十分対抗できる所要時間だったと言われています。
さらにくれない丸は豪華な設備を設けたことで話題となりました。
映画やダンスパーティーに用いられた大娯楽室、瀬戸内海の景色を楽しめる展望室、冷暖房完備、1等室廊下には絨毯を敷くなど…
その豪華さから「瀬戸内海の女王」と称されていました。
↑当時の船内が分かるパンフレットがありました。ご参考までにどうぞ
就航同年には姉妹船「むらさき丸」も就航。
その後登場した船も加えて最盛期には阪神~別府航路に5隻が就航していました。
当時は新婚旅行先として別府が人気だったことから多くの新婚カップルを運んでいたといいます。
しかしながら山陽新幹線の開業、カーフェリーの登場、新婚旅行の海外化といった時代の変化により乗客が激減。
阪神~別府航路は客船からフェリー(乗客+自動車航送)に変更されることとなり、1980年、くれない丸は定期運航を終了しました。
その後、予備船として1年あまり使用された後佐世保重工業で係船。
1988年に日本シーラインに買い取られ、レストラン船「ロイヤルウイング」に改装されました。
レストラン船として横浜の地で第2の役目を果たすこととなったロイヤルウイングですが、その運命は決して平穏だったわけではなく、なんとその後5回も運営会社が変わっています。
ロイヤルウイングを運営したことのある会社には太平洋フェリー・吉本興業・サンリオなど有名どころもたくさん。
サンリオ運営時はキャラクターとのコラボクルーズを行っていたそうです。
こうして何度も廃船の危機を迎えつつも2023年まで現役を続けてきたロイヤルウイング。
ついにその長い歴史に幕を下ろすこととなります。
乗り物⑩ロイヤルウイング
現役最古の客船・ロイヤルウイング。
引退する前に乗っておきたいと思い、予約しておきました。
ということで、横浜の乗り物を巡る旅10番目の乗り物はロイヤルウイングです!
乗船するのはディナークルーズ。夜のみなとみらいの景色を楽しみたいと思います。
まずは乗船券の購入から。
大さん橋内にあるロイヤルウイングチケットカウンターで予約しておいたきっぷを受け取り、料金を支払います。
きっぷを受け取ったら、まずはロイヤルウイングの船体全体を見に行きます。
ということで大さん橋の屋上、「くじらのせなか」へ。
こちらがロイヤルウイングです!
瀬戸内海航路に使われていただけあってけっこう大きな船。
くれない丸として建造された際に瀬戸内海の景色を楽しめるよう設けられた大きな窓が特徴的です。
船尾側。
フェリー等とは異なり、船尾がすぼまった流線形をしているのが特徴的。
「瀬戸内海の女王」という名にふさわしい優美な船体ですね。
いよいよ乗船!
そろそろ乗船開始時刻になるので大さん橋の中に戻ります。
16:40、乗船開始の時刻になりました。
2番乗船口より乗船です!
いよいよ、大さん橋からクルーズ船に乗るときがやってきました。
ロイヤルウイングを横に見ながら通路を下っていきます。
船の前まで降りてきました。
さあ、それではロイヤルウイングの中に足を踏み入れます!
入ってすぐに現れたのはエントランスホールのような場所。
そこから階段を登っていき…
3階、Bデッキの「フリージア」というお部屋に向かいます。
フリージアの入り口で係員さんにチケットを見せるとお席まで案内されました。
海の見えるこちらのお席へ。
今回選んだコースは中華料理のバイキング形式。船の船首寄りにはたくさんのお料理が並んでいます。
海の景色を眺めながらバイキング、いいですね~
…とここまで紹介して分かる通り、「ロイヤルウイング」になったときに徹底的な改装が施されており、「くれない丸」時代の面影を感じさせない内装になっています。
就航から63年の船とは思えないきれいな内装。何も知らなければ日本最古の客船なんて想像もつかないでしょうね。
本格中華のバイキング
私より前にこのクルーズを体験した方によると、見どころが多くて食べる時間がなくなっちゃう…らしいので出航する前にお料理を取りに行きたいと思います。
美味しそうな料理がいっぱい並んでいて…目移りしちゃいますね!
ふと見ると、窓の近くにロイヤルウイングがくれない丸として進水する前の貴重な写真が展示されていました。
くれない丸時代の展示なんてないだろうと思っていたのでちょっと驚いちゃいました。
一通り盛り付けてみました!
海を見ながら優雅なお食事。レストラン船ならではのひとときです。
…そういえば、引退まであと2ヶ月を切ったので人多いのかな?と思っていたら全体の半分も埋まっていなかったですね…
これもCOVID-19のためなのでしょうか?
にっぽん丸に見送られて
17:00。そろそろ出航の時間です。
食べ始めていましたが、ちょっと中座して外の様子を…
サンデッキと書かれた方へ向かいます。
ドアを開けて外へ。
ちょうど大さん橋を離れるところでした。
眼の前には大きな船。にっぽん丸です。
ロイヤルウイングも初めて見たときは大きな船だと思いましたが、にっぽん丸に比べたらまだまだ小型というのがよくわかります。
そんなにっぽん丸に見送られてロイヤルウイングは出発しました。
ベイブリッジをくぐって東京湾へ
一旦船室に戻って食事の続き。
しばらくして再びサンデッキに戻ってきました。
出航と同時に雨が降ってきたので誰一人いません。
さらに上に行ける階段があるようですが、屋根がないので傘を持ってきました。
改めて登っていきます。
ここがロイヤルウイングの一番上のAデッキ。
丸テーブルと椅子があちこちに並んでいます。
見晴らしはとってもいいのですが、残念ながら雨模様なので景色がくすんでしまっているのが残念…
ちょうど横浜ベイブリッジをくぐるところでした。
ベイブリッジは1989年に完成した斜張橋。
その優美な姿は横浜港のシンボルとなっています。
ベイブリッジを過ぎると、左右には本牧ふ頭・大黒ふ頭のガントリークレーンが見えます。
横浜港は江戸末期の開港以来海外との貿易の拠点として活躍してきた歴史のある港。
現在でも貿易額は全国3位と重要な港となっています。
遠くをみると、大きな客船がぼんやりとその姿を見せていました。
これはダイヤモンド・プリンセス…
あのCOVID-19の初期に話題となった船です。
実はダイヤモンド・プリンセスはその高さからベイブリッジをくぐることができず、ベイブリッジ外の大黒ふ頭に停泊することになっています。
(※2023年4月よりエアドラフトを調整することで再びベイブリッジの下を通行可能になったそう)
近年クルーズ客船は大型化しており、ベイブリッジをくぐれない船が増加。
せっかく大さん橋を整備したのにベイブリッジの外にある大黒ふ頭や本牧ふ頭に新たにターミナルを整備しなければならなくなってしまったそうです。
船は横浜港の範囲から離れ、東京湾へ。
私のやっている位置情報ゲームが示す最寄り駅が鶴見線の海芝浦を示したところで反転し、再び横浜港へと戻っていきます。
ベイブリッジ~みなとみらいの夜景
外を見てたら食べる時間がなくなっちゃうというのは本当でした(笑)
料理はとっても美味しいのですがそれ以上に見どころが多くて…
個人的にはこのココナッツ風味蒸し餅が中にカスタードクリームが入っていて好みでした…!
他にも料理長おすすめの一品(この日は玉子焼きミルフィーユ仕立ての甘酢ソース)や餃子ソーセージなど美味しい料理がたくさん並んでいました。
外はそろそろ暗くなり、港には明かりが灯りだしました。
そんな中ライトアップされたベイブリッジへ近づいていきます。
迫りくるベイブリッジ。
上を走る車の音が聞こえてきます。
(そしてくぐる瞬間、橋から水滴がいっぱい落ちてきました…)
いや~本当に迫力ありますね~!
ベイブリッジを過ぎるといよいよ夜景きらめくみなとみらいの光景が見えてきます!
船上にはそんなロマンチックな体験を盛り上げるためか、ハートのイルミネーションがきらめいています。
横浜の夜景を眺めて、このハートをバックに写真を撮る…そんな百合っぷるの姿が目に浮かびます。
まもなくみなとみらいが近づいてきました!
他の乗客もサンデッキに出てその美しい夜景を眺めています。
ランドマークタワー、コスモクロック21、ヨコハマグランドインターコンチネンタル…
夜の海を照らして輝くみなとみらいの建物たち。
ロイヤルウイングはその絶景を楽しんでもらうためにゆっくり周遊していきます。
船が進むごとに違った姿を見せるみなとみらいの夜景。
このクルーズのハイライトですね。
みなとみらいの海上をぐるっと廻ったロイヤルウイングはいよいよ大さん橋に向かっていきます。
こちらもきれいにライトアップされたにっぽん丸が出迎えてくれました!
そろそろ下船の準備しないと…
降りる支度を済ませ、下船口へ。
ただ、もう少しだけ下船まで時間があるようなので…
横にあるショップでロイヤルウインググッズを購入。
ショップの横にはロイヤルウイング営業終了のご案内が…
よく見ると「くれない丸」時代のイラストが描かれています。
くれない丸からの歴史を感じさせてくれますね。
18:50、横浜港大さん橋国際客船ターミナル着岸。
1時間50分の旅の終わりです。
振り返って見たロイヤルウイングはきらびやかにライトアップされていました。
ロイヤルウイングの出航をお見送り
下船後、やってきたのは「くじらのせなか」。
ロイヤルウイングのディナークルーズはあともう1便あり、その出航をお見送りすることにしました。
先ににっぽん丸が出航するようです。
乗客のみなさんが手を振り、別れを惜しみます。
続いてはロイヤルウイング。
ジャンジャンジャンジャン…と銅鑼が鳴ったあと、「ボォ~」という重低音の汽笛を汽笛を3度繰り返してロイヤルウイングは大桟橋を離れていきました。
ということで、今回は就航から63年、日本最古の客船ロイヤルウイングの乗船記でした!
かつては「瀬戸内海の女王」と称された船。
その愛称に違わぬ優美な外観と古さを感じさせない内装の素晴らしい船。そこでいただく中華料理のバイキングと船から眺めるみなとみらいの夜景…
本当に無くなってしまうのが惜しいと思わせられる素敵なクルーズでした。
旅行から約1ヶ月半後の2023年5月14日、ロイヤルウイングはファイナルクルーズを迎えました。
多くの人に見送られたロイヤルウイングはその後6月27日に曳航で横浜を離れ、壱岐を経由し韓国で解体されました。
63年間もの長い間活躍し続けたロイヤルウイング。
お疲れ様、そう言いたいと思います。
壱岐にやってきたロイヤルウイングを運良く見ることができました!
その様子はこちらから↓
象の鼻からの夜景
ロイヤルウイングを見送って、今日の最後にやってきたのは先程も来た象の鼻。
ここから見るみなとみらいの夜景もまたきれいらしいと聞いたので。
先端に標識灯があり、ときどき緑に光っています。
ということで、これが象の鼻から見たみなとみらい!
ランドマークタワーからコスモクロック21、インターコンチネンタルホテル、赤レンガ倉庫まで一度に見渡すことができます!
横浜の夜の締めくくりにきれいな夜景を堪能しました。
あとはホテルに戻るだけ。
近くのみなとみらい線日本大通り駅にやってきました。
駅構内にはロイヤルウイングの広告がいっぱい。
これ、休止後はどうなったんでしょうね?
日本大通りからみなとみらい線で横浜まで。
横浜からは京急に乗り換え。宿泊地である昨日と同じホテルを目指します。
ひっきりなしに列車が発着する横浜駅。
そんな中やってきたのは普通浦賀行き。
3駅乗車し、黄金町で下車。
今でこそ普通しか停まらない駅ですが、実は1930年の京急の前身・湘南電気鉄道の開業時には起点駅となった由緒ある駅だそう。
この駅から歩いてすぐのホテルで2日目を終えました。
続きます。
★乗車データ
みなとみらい線/西武池袋線直通 急行 清瀬行き 日本大通り(20:07)→横浜(20:13) 東京メトロ 17000系 17187F
京急本線 普通 浦賀行き 横浜(20:37)→黄金町(20:42) 1000形 1643F
※2023年3月24日乗車
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